「吟遊詩人」


─さぁ、昔語りをはじめよう─


槍に身体を貫かれる
全ての人の幸せを願って 逝く

争いの止まぬ世の中
他人の笑顔を見るのが好きだったから
ただ一人になっても 平和を叫んでいた

私の思いに同調してくれた
敵同士になっても 友達で在りつづけてくれた
貴方のことを 愛している

「だから許して」なんて ずるいかもしれない

槍に身体を貫かれる
全ての人の幸せを祈って 逝く
ここから見える 見えなくても解る
貴方が泣いていること 悔やんでいること
お願いだから 自分のせいにしないで

争いの止まぬ世の中
「紫眼の者は危険だ 殺すべきだ」
高まる民衆の声は抑えきれない

貴方に内緒で死地へ向かう私
もう戦い傷付く姿など見たくなかったの
貴方のことが大事だから

自分勝手な気持ち 無理矢理押しつけて

槍に身体を貫かれる
全ての人の幸せを想って 逝く
ここから見える 見えなくても解る
貴方が全ての人を憎んでいること
お願いだから 彼らのせいにしないで

「全ての人」の中に 貴方がいないことだけが
心残りなのだけど

槍に身体を貫かれる
全ての人の幸せを夢見て 逝く
ここから見える 見えなくても解る
貴方の困った表情 優しい微笑み
哀しみだけに囚われつづけないで

お願い 私の愛する貴方のままでいて


─真実なのか 虚構なのか
誰も知らない物語
これは哀しみのエレジー
少女の願いは叶うのか─