「聖夜」


魔法の明かりが飾り付けられた街並み。電気の明かりとは違う、ぼんやりとした柔らかな輝き。
「グランバニアには遠く及ばないけれど」
と、フェミアが恥ずかしそうに言う。
魔法が使えない代わりとして科学を発達させたグランバニアの街は、聖夜でなくてもネオンが輝いている。国の豊かさを、魔力が無くてもここまで出来るんだという自負を表すかのように、国中の街が夜でも昼間のように明るい。眠らない国。
「いや、綺麗だよ」
お世辞でもなんでもない、心からの言葉。
確かに、魔力の光は電気の明るさには及ばない。
確かに、魔力の光は電気ほど色にバリエーションがない。
点滅させることも出来ないし、球形以外の形を取ることは容易ではない。
それでも。
「俺は、すごく綺麗だと思う」
柔らかい光が、街並みと上手く調和した幻想的な光景。
グランバニアの夜とは違う、優しい風景。
「ありがとう、ザク」
微笑むフェミアの表情が、背景と相まって。
まるで一枚の絵画のようで。
「きっと、フェミアと見るから綺麗なんだね」
彼女の耳に届かない小さな声で、呟く。
一人で見ていたら、この風景の美しさに気づけなかっただろう。
いつも彼女は、俺にたくさんのものをくれる。
たくさんの気づけなかったことに、気づかせてくれる。
「フェミア」
白い粉雪がフワリと落ちてきた。
「何?」
空を見上げていたフェミアの綺麗なアメジストの瞳が、ザクを映す。
彼女の眼差しは、清らかで、真っ直ぐで。
そんな彼女の心そのままの双眸に、正直でありたいと思う。
「ありがとう。あと、メリークリスマス」
「メリークリスマス」
ちらちらと舞い落ちる雪が、二人を包んでいた。